最高裁判所第一小法廷 昭和33年(あ)1265号 判決 1960年6月23日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人大塚重親の上告趣意について。
所論前段は、原判決の事実誤認を主張するものであって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
所論後段は、判例違反を主張する。しかし、原判決が、第一審判決挙示の証拠と原審における証拠調の結果とを綜合してなした判示事実によれば、被告人は、パチンコ店モナコ会館の景品たばこを買入れ、これを転売して利得しようと企て、自己の現金又は自己振出名義の小切手をもって第一審判決判示のごとき景品たばこを買集め、右会館の現金又は会館振出名義の小切手をもって一般小売商から買入れたものと区別し、別個にこれを会計係松原元春に引渡し、同人より右モナコ会館振出名義の小切手でその代金を第一審判決判示のごとく受け取って利得していたというのであり、また、第一審判決の判示によれば、被告人は、製造たばこ新生(一個二〇本入)、ピース(一個一〇本入)、光(一個一〇本入)を一個につき定価より平均五円安にて買集め、前記会館において定価で犯罪一覧表記載のごとく昭和二九年二月六日頃から同年一一月二七日頃までの間約四九回に亘り新生合計約四六、二五九個、ピース合計約八七、五八〇個、光合計約一四、八八〇個を同会館に販売したというのである。されば、本件被告人の所為は、当裁判所の判例(昭和三〇年(あ)一〇二五号同三二年七月九日第三小法廷決定判例集一一巻八号二〇五五頁以下)にいわゆる公社または指定小売人でない者が指定小売人から売り渡された「製造たばこ」を反覆継続してする意図の下に同一のパチンコ屋に販売したものに該当し、たばこ専売法二九条二項に違反するものといわなければならない。所論引用の判例は、いずれも、本件に適切でない。それ故、所論後段も採るを得ない。
よって、刑訴四〇八条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 高木常七)